認知症徘徊コラム

認知症に関する初の法律【認知症基本法】でなにが変わる?

 2023年6月14日「認知症基本法」が成立しました。
実際は10年前から法制化に取り組んでいたようですが、認知症基本法の成立は、認知症を患う本人や家族にとって期待ができる法律になったのではないでしょうか。

 世界でも高齢化が急速に進展している中で、日本の高齢化率は最も高くなっており、今後もさらに上がっていくと言われています。

 そして、高齢化とともに認知症患者も増加して行くなかで、警視庁のデータでは認知症の行方不明者が10年で最多を更新したとのことでした。
認知症行方不明者の増加などといった背景があり、認知症に関する初の法律「認知症基本法」が成立されました。

今回の記事では
1. 認知症基本法について
2. 基本理念と施策について
3. 私たちの生活への影響
4. 「徘徊行方不明者数の増加」の社会問題
を中心に説明しています。

 

1.認知症基本法とは?

 認知症基本法の目的は「認知症の人が尊厳を保ちつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策を総合的かつ計画的に推進 →認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支えあいながら共生する活力ある社会(=共生社会)の実現を推進」とされています。

 つまり、認知症の人でも尊厳と希望を持ち社会の一員として暮らし、認知症の人を含めた国民一人一人がお互いに尊重し合いながら共生社会を作っていくということです。
共生社会の実現の推進という目的に向け、基本理念等に基づき認知症施策を国・地方が一体となって講じていくことが大切になってくるのです。

7つの基本理念
 認知症基本法の7つの基本理念を簡潔に説明します。

1. 全ての認知症の人が、基本的人権を持った一個人として、自らの意思により日常生活・社会生活を営めること

2. 国民が共生社会の実現に必要な、認知症に関する正しい知識や理解を深めていくこと

3. 全ての認知症の人にとっての障壁になるものを除去し、社会の対等な構成員として地域で安心して自立した日常生活を営むことができるとともに、認知症の人の意思を述べる機会や社会活動に参画する機会を確保し、個性と能力を発揮できるようになること

4. 認知症の人の意思を尊重しつつ、良質で適切な保健医療サービス・福祉サービスが切れ目なく提供されること

5. 認知症の人の家族等にも支援を行うことにより、認知症の人及び家族等が地域で安心して生活できること

6. 共生社会の実現への研究等の推進と、認知症と軽度の認知機能障害に関する予防・診断・治療・リハビリ・介護方法・社会参加の在り方・社会環境の整備その他、研究等の成果を国民が享受できる環境の整備をすること

7. 教育・地域作り・雇用・保健・医療・福祉その他関連分野について、総合的に取り組んでいくこと

以上7つが基本理念になります。

8つの基本的施策
 次に8つの基本的施策です。
「認知症」に関しての国民理解の推進や、社会参加等の環境整備、認知症についての研究等基礎的な施策になっています。

1. 認知症の人に関する国民の理解の増進等
2. 認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進
3. 認知症の人の社会参加の機会の確保等
4. 認知症の人の意思決定の支援及び権利利益の保護
5. 保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備等
6. 相談体制の整備等
7. 研究等の推進等
8. 認知症の予防等

以上8つが基本的施策です。

2.認知症基本法で何が変わるのか?

 今回制定された認知症基本法の目的は「共生社会の実現を推進するため」であり、基本的な考え方となります。
制定により私たちの生活に大きな変化はほぼありません。
しかし、認知症本人や家族等が暮らしやすい社会にしていくために、「認知症」に関する正しい知識と理解を深めていくことが重要になってきます。

 私たち介護士も「認知症基本法」によって、今ある知識をアップデートして、認知症についての正しい知識と理解をさらに深めていきたいです。

3.徘徊による行方不明者の増加

 冒頭でもお伝えした通り、警視庁のデータによると認知症の人の行方不明者が10年で最多を更新しています。
このデータは認知症患者の徘徊に関して大きな社会問題でもあり、今後の最重要課題となることでしょう。

 課題を克服するためにも、位置情報や行動パターンが把握できるGPS機器の利用は非常に役に立ちます。
そして認知症本人と家族・介護者が「安心した」生活が送れることにより、精神的な負担の軽減にも繋がります。

 認知症の徘徊対策に特化した「認知症徘徊GPSセンター」では、手軽にGPS機器のレンタルや購入が可能です。

安心して見守ることができた
● 実際に捜す事はなかったが、安心して過ごせるようになった
● いざという時の「安心」のためにレンタルした。実際には使用しなかったが、気持ちがとても楽になった。

などといった声が多く寄せられており、認知症患者の安全の他に、家族の精神的な負担の軽減にも役に立っています。

 認知症徘徊GPSセンターのGPS機器は、ご家族が徘徊でお困りの方であればどなたでも、最短翌日から利用することができます。
初期費用も不要で、月単位での解約(解約手数料なし)が可能なため、徘徊に困っていたり徘徊による行方不明が心配であれば、一度検討してみると良いでしょう。

4.まとめ|認知症に関する初の法律【認知症基本法】

 今回の「認知症基本法」の制定は、まだスタートしたばかりではありますが、認知症患者本人やご家族・介護者にとって大きな希望になるのではないでしょうか。
社会全体で啓発活動し、より「認知症」を身近に感じてもらうことで、社会全体の問題である「徘徊による行方不明者数の増加」を抑えることにも効果的だと思います。
まずは、自治体や地域のコミュニティーを積極的に活かしていくことで期待できるものになるでしょう。

 認知症基本法の制定により、私たち介護士も認知症に関する知識や、認知症患者をサポートするサービスの在り方など、改めて見直せる良いきっかけになったと思います。
一人一人が「認知症」の正しい知識と理解を得て、認知症本人とそのご家族が安心して暮らせる共生社会がいち早く実現できることを願っていきたいものです。

参考記事
・令和4年中における行方不明者の状況(警視庁)
・令和4年中における行方不明者の状況 図表(警視庁)
・共生社会の実現を推進するための認知症基本法について(厚生労働省)
・共生社会の実現を推進するための認知症基本法案(衆議院)
・第1章 高齢化の状況(第1節 2) 内閣府

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執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士8年目の30代3児の母。介護職の楽しさを発信するためwebライターとしても活動中。大学卒業後、金融機関に就職するもやりがいを感じられず介護職に転職。デイサービス→結婚を機にリハビリ施設へ。介護士として毎日楽しく高齢者に寄り添いながら働いています。

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