認知症徘徊コラム

アルツハイマー病型認知症の治療薬「レカネマブ」の可能性と有効性は?


 医療が進み近年では、認知症の治療薬において新しい展望が広がっています。
その中で最近注目を集めているのが、アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」です。
 アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」は2023年9月25日に厚生労働省より薬事承認(医薬品や医療機器などの製造販売を厚生労働大臣が承認すること)を受け、同年12月には保険適用となり、東京や大阪で実際に患者への投与が始まったことが知られています。
 
「アルツハイマー病の原因に働きかける世界ではじめての治療薬」として製造されたレカネマブは、認知症を患う本人や、その本人に関して悩みを持つ家族にとって大きく期待を寄せられるものになりました。
 本記事では、アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」について、簡単な概要や認知症における効果・期待できることについて現段階で分かっていることを探っていきます。
認知症は少しでも進行を遅らせることが重要です。
新薬がさらに一般的に浸透し、ご本人やご家族の不安や悩みが少しでも軽くなることを切に願っています。

※本記事は2024年2月現在のデータに基づくものとなります

 

1.アルツハイマー病新薬「レカネマブ」とは

 アルツハイマー病新薬「レカネマブ」は、日本の大手製薬会社であるエーザイ株式会社とアメリカの神経科学領域を専門とする医薬品メーカーのバイオジェンが共同で開発した薬で、脳の「アミロイドβ」というタンパク質を標的にする新しい認知症治療薬の一つとなっています。
「アミロイドβ」は、アルツハイマー病などの神経変性疾患において、脳内に異常に蓄積することが知られており、それらを減少させることが認知症の改善に繋がると言われています。

2.現段階での臨床試験

 「レカネマブ」の臨床第3相試験(多数の患者さんを対象に、薬の有効性を検証するための試験)では、1,795人分のデータに基づき安全性や有効性が認められており、「アミロイドβ」の除去が認知症の進行を遅らせる可能性が示唆されているようです。

3.臨床試験での効果

 「レカネマブ」は、「アミロイドβ」の集合体の中でも、大きさが中くらいで神経毒性の強い「プロトフィブリル」や、より大きい「アミロイド斑(老人斑)」に結合して脳から取り除く働きがあると考えられています。
2週間に1度、約1年半にわたって「レカネマブ」を点滴投与することにより、「レカネマブ」非投与と比べ「アミロイドβ」が著しく減少したというデータが出ています。
さらに、CDR-SB (記憶、見当識、判断力と問題解決能力、地域社会の活動、家庭および趣味、身の回りの世話の合計6項目を合計点数で評価するもの)で、点数の悪化を27%抑制したそうです。

 このように、「レカネマブ」の効果として「アミロイドβ」の減少を働きかけることにより、認知症の進行を抑制できる可能性を持っていると言われています。
現段階では、「レカネマブ」が認知症の改善にどれだけ有効かは確定していませんが、「アミロイドβ」へのアプローチが注目を集め、期待が高まっていることもまた事実で、今後の動向に注目していきたいです。

4.薬価はいくら?

 認知症薬が保険適用されたとしても、どのくらいの値段がかかるのか不安な方も多いと思います。
 
 薬価(公的価格)は年間約298万円(体重50キロの場合)で、体重によって投与量が変わるので多少異なります。
実際の患者の自己負担は個人差はありますが、高額療養費制度を利用した場合、年に10数万円程度といわれています。
高額療養費制度では、薬価が高額になった際、年齢や所得に応じて自己負担に上限を設けているためです。

5.課題と副作用

 「レカネマブ」には期待が寄せられていますが、新薬ということでデータが不十分な面もあり、いくつかの課題や懸念も存在し認知症の改善にどれだけ寄与するか気になるところです。
 
 「レカネマブ」の投与で、最も多かった副作用として、大きく分けて「脳のむくみ(血管周りに水が溜まる浮腫)」と「脳内のわずかな出血や鉄沈着」の2種類があります。
脳の血管に病変のある方などは、副作用が起こりやすいと言われているので投与に注意が必要です。
 課題が多く残る段階ではあるものの、将来的に期待していきたいですね。

6.レカネマブの投与対象

 「レカネマブ」の投与をするには、条件があります。
まず投与の対象は、アルツハイマー病による軽度認知障害または軽症認知症に限定されています。
血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭葉変性症などアルツハイマー病以外による認知症や、アルツハイマー型でも中・重度の認知症であれば投与ができないことがあるようです。

1. 脳への「アミロイドβ」の蓄積が認められる
2. 副作用リスクの高い特有の脳MRIの異常がないこと
が重要で、臨床診断やMRIなどから判断し投与の対象であるか否か判断します。

 また軽度認知症とは、認知機能や記憶力の低下などみられるものの日常生活への影響が少ない状態のことを言います。

7.レカネマブ投与のメリット

 投与対象である条件を満たし認知症初期から投与することで、認知症の発症を予防したり、認知症状を抑えたり、介護負担を減らしたりできるメリットがあります。

「この先の介護への不安感」
「認知症の発症を予防したい」
などという悩みにも「レカネマブ」が一役を担うかもしれません。

 認知症状を抑えたり遅らせたりする薬「対処療法」としての薬はあったものの、治療できる薬がなかったこともあり、終わりの見えない介護に不安や悩みを抱くご家族も多くいます。
認知症初期でも人によっては徘徊の症状が出ることもあります。
認知症の徘徊対策に特化した「認知症徘徊GPSセンター」では、手軽にGPS機器のレンタルや購入が可能ですが、GPS機器などで対策を取っていても根本的な解決にはならず限界を感じる方もいらっしゃると思います。

 今回、「レカネマブ」の保険適用により認知症治療薬としてより身近な薬になったのではないでしょうか。
 現段階では認知症患者誰もが投与できる訳ではありませんが、認知症の4つの種類のうちアルツハイマー病は全体の67.6%を占めているため、多くの患者の期待に応えられるのではないでしょうか。
今後も引き続き動向を見守っていきたいです。

8.アルツハイマー病新薬「レカネマブ」|まとめ

 「レカネマブ」は、2022年7月にアメリカの食品医薬品局(FDA)に承認申請し、2023年1月にアルツハイマー病型認知症の治療薬としてアメリカで迅速承認されました。
それとともに日本でも厚生労働省に承認申請し、2023年7月FDAが正式承認したのち、同年9月に日本でも製造販売を承認しました。

 「レカネマブ」が成功すれば、これまでの認知症治療のアプローチに新たな未来をもたらすこともあるかもしれません。
今後さらなる安全性や有効性の検証が求められ、慎重な導入が必要になってきます。
将来的により多くの認知症患者に対して、効果的な治療法を提供できることが現実になってくるといいですね。

 臨床試験の進捗を注視しつつ、「レカネマブ」が認知症治療において新しい場面に繋がっていく可能性に期待していきたいものです。

参考記事
・厚生労働省  高額療養費制度を利用される皆さまへ
・東京都健康長寿医療センターにおける認知症新薬レカネマブの投与について
・国立長寿医療研究センター  アルツハイマー病の新しい治療薬(前編)レカネマブについて
・厚生労働省  レカネマブ(遺伝子組換え)製剤の最適仕様推進ガイドラインについて
・エーザイ㈱  日本においてアルツハイマー病治療薬として製造販売承認を取得
・高額医薬品(認知症薬)に対する対応参考資料
・レケンビに対する費用対効果評価にに係る検討(案)
・厚生労働省 認知症施策の総合的な推進について (参考資料)

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執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士8年目の30代3児の母。介護職の楽しさを発信するためwebライターとしても活動中。大学卒業後、金融機関に就職するもやりがいを感じられず介護職に転職。デイサービス→結婚を機にリハビリ施設へ。介護士として毎日楽しく高齢者に寄り添いながら働いています。

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