認知症徘徊コラム

認知症と帯状疱疹の関係|認知症が進むって本当?


 筆者は介護士として勤務してから8年ほど経過しますが、この間で「帯状疱疹」を発症した利用者を数多く見てきました。
そして帯状疱疹発症後に
● 認知機能の低下
● 顔つきや雰囲気の変化
● 受け答えがちぐはぐになった

など、ご利用者の変化を身近で感じていました。
予後は認知機能が回復する方や、軽度の認知症を患ったままの方など個人差があります。

 帯状疱疹は免疫力が下がると発症しやすく、発症すると神経に炎症を起こし、痛みや痒みを伴います。
日本人の約3人に1人が80歳までに発症するとも言われています。
認知症と帯状疱疹の関係について研究が進められているものの、現時点において決定的なエビデンスが不明であるため今後の研究結果に注目していきたいです。

 今回は、帯状疱疹と認知症の関係性についての記事になります。
認知機能の低下による、認知症状が出現した際の対応も一緒にまとめています。
よかったら最後までご覧ください。

 

1.介護現場から感じる帯状疱疹と認知機能の低下

 介護職歴8年目になる筆者は、デイサービスやデイケア(通所介護事業)でたくさんのご利用者に携わってきました。
そして帯状疱疹を発症し、認知機能の低下がみられた事例もいくつか見ています。

 筆者が「帯状疱疹」と「認知症」は何か関係があるのではないか?と感じたきっかけは、些細なことでした。
あるご利用者が「帯状疱疹を発症した」という情報をスタッフ同士で共有していた際、先輩介護スタッフが「帯状疱疹は認知症が進むからね…」と言いました。
当時、介護職歴が浅かったため先輩スタッフの言葉を聞いて
「なぜ帯状疱疹になると認知症になるのか?」
「帯状疱疹は脳にも影響が出るものなのか?」
と驚きと疑問が浮かぶばかりでした。
その後帯状疱疹を発症したご利用者の経過を見ていくと、認知機能が低下していたり、いつもと違った顔つきになっていたり発症前とは違う印象を受けました。

 帯状疱疹になった方全員が認知症・認知機能の低下に繋がった訳ではありません。
しかし、先輩介護スタッフが言っていたことを現場で実感したのを覚えています。

2.認知症と帯状疱疹のエビデンスは現時点では不明

 現時点では、認知症と帯状疱疹の決定的なエビデンスは不明ですが様々な研究が進められています。

 米タフツ大学とオックスフォード大学の研究チームは、「絹タンパク質とコラーゲンでできた幅6ミリのドーナツ型のスポンジに神経幹細胞を植え付け、これに水痘帯状疱疹ウイルスや単純ヘルペスウイルス1型を感染させる」という実験を行いました。

 結果は「水痘帯状疱疹ウイルスのみに感染しても、アルツハイマー病で特徴的なタウタンパク質やアミロイドベータの形成を促すことはなかったが、神経細胞に休眠状態の単純ヘルペスウイルス1型が存在する場合、水痘帯状疱疹ウイルスに曝露することで単純ヘルペスウイルス1型が再活性化し、タウタンパク質やアミロイドベータが劇的に増加した」との研究結果を得られました。
 つまり、単純ヘルペスウイルス1型(口唇ヘルペスなどの一般的な感染症)が、神経へ潜伏している状態で水痘帯状疱疹ウイルスと接触することにより再活性化し、アルツハイマー病の原因といわれる「タウタンパク質」や「アミロイドベータ」が劇的に増えたということが分かりました。

 この研究結果は人工的な環境の実験だったため、十分な証拠には至らないのですが今後の研究材料として期待ができそうですね。

3.2種類のヘルペスウイルスがアルツハイマー病の発症のカギ?

 英オックスフォード大学のルース・イツアキ教授の研究論文(1991年)では「多くの高齢者の脳に単純ヘルペスウイルス1型のDNAが存在していることを示し、1997年の研究論文では「単純ヘルペス1型ウイルス(口唇・性器ヘルペス)」が、「アポリポタンパク質E4(APOE4)」といわれるアルツハイマー病の主要な感受性遺伝子と組み合わされることによって、アルツハイマー病の発症リスクが高くなることを明らかにしています。
 また、子どもに多い病気である「水ぼうそう(水痘)」のウイルスも、単純ヘルペス1型ウイルスとはまた別物ですが、何年も神経細胞に潜伏したまま高齢期に入り、帯状疱疹を引き起こし認知症リスクを高くするおそれがあると言います。

 このように帯状疱疹とアルツハイマーとの関連性は未だに不明ではあるものの「通常は無害なヘルペスウイルスがアルツハイマー病の原因である」といった説を支持している先生もいます。

 帯状疱疹は予防と早期発見・早期治療が大切です。
現在、50歳以上の方が帯状疱疹の予防ワクチンを接種できます。
ワクチン接種により、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫力を高めて、帯状疱疹の発症を予防することができます。
イギリスや台湾の研究結果によると、帯状疱疹予防ワクチンの接種によって認知症のリスクが低下したことが示されています。

4.家族が認知症になったときにできること

 帯状発疹を発症し認知機能が低くなったり、いつもと雰囲気が違うなどと感じたときに、身近にいる家族は何ができるのでしょうか。
認知機能が低下すると
● 徘徊などの行動障害
● 理解力・判断力の低下
● 感情のコントロールができなくなる
などといったことが目立つようになります。

 特にアルツハイマー病の徘徊には注意が必要で、初期の段階から徘徊がみられ、中期になると顕著に現れます。
住んでいるところから隣町へ行ってしまったり、家族が思っていたより遠くへ徘徊してしまい、見つけるのに時間がかかってしまったというケースもよくあります。

 また、愛知県警データによると発見された場所は「水場」が50%と半数を占め、ほか山林や線路にも行ってしまうこともよくあり、徘徊は大きな事故に繋がる可能性が高まります。
徘徊からの事件事故を防ぐためにもGPS機器の導入を検討されるご家族も多く、現在位置や移動経路などが分かるGPS機器が活躍しています。
家族ができることとして本人の精神的な辛さや生活のしにくさなど、できる限り理解しサポートしていくことではないでしょうか。

5.まとめ

 筆者の経験から帯状疱疹と認知症の関係性についてまとめました。
今回紹介した論文著者の1人であるイツアキ教授は、繰り返し感染することによって脳が損傷し、それがアルツハイマー病の発症につながっていく可能性もあると言っています。

 アルツハイマー病の発症を可能な限り避けるためにも、帯状疱疹のワクチン接種や免疫力が下がらないよう生活習慣の見直しが大切になってきます。
適度な運動、バランスの良い食事、十分な睡眠をとるなど心がけていけたら良いですね。

 帯状疱疹かも?と不安になった時は、早期発見と早期治療が大切なので軽い症状でも遠慮せずに病院に行くことをおすすめします。

参考記事
・帯状疱疹予防.JP
・川崎医科大学 総合医療センター「ヘルペス」とは?-ヘルペスは大きく分けて2種類ある-
・愛知県警察【第2章】認知症高齢者の徘徊の実態 

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執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士8年目の30代3児の母。介護職の楽しさを発信するためwebライターとしても活動中。大学卒業後、金融機関に就職するもやりがいを感じられず介護職に転職。デイサービス→結婚を機にリハビリ施設へ。介護士として毎日楽しく高齢者に寄り添いながら働いています。

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