認知症徘徊コラム

認知症高齢者は車で徘徊するの?|徘徊の兆候と対応策・自主返納について

 「認知症高齢者の徘徊の実態」によると、行方不明時の本人の移動手段は約7割の人が「徒歩」での徘徊というデータが出ました。
徒歩(70.4%)の他にも自転車(9.1%)・自家用車(3.4%)・公共交通機関(2.2%)と、少なからずいるようです。
 しかし、徒歩以外での徘徊となると行動範囲がさらに広くなり、発見に至る時間や事件事故に巻き込まれるリスク、本人や家族の精神的負担も増加してしまいます。
また、GPS機器を所持していたとしても、車での徘徊の場合追跡が難しくなります。

 昨今の高齢者が起こす重大な自動車事故から、運転免許証の自主返納への世間一般の意識は強くなっているものの、都市規模が小さいところでは「車がないと生活が不便」といった理由により、返納をためらう高齢者が多くいます。
各自治体や事業者が交通機関の割引サービスなどの支援に取り組んでいますが、
「希望通りにバスの予約が取れない」
「タクシー割引きがあっても、何件も通院するので高くなる」
など、気軽に利用できるような環境までには至っていないのが現実です。

 今回の記事では、認知症患者が車で徘徊してしまった場合の対応策や問題点、
運転免許証の自主返納方法について紹介します。
ぜひ、最後までご覧ください。

 

1.認知症患者が車で徘徊?その問題点

 認知症患者の徘徊の意味は「あてもなくうろうろと歩き回る」と言われています。
しかし、最初は本人は「目的」があって外出します。
目的を達成していく途中で分からなくなった結果、徘徊に繋がってしまうということです。

詳しくは「認知症で徘徊している可能性のある方を見つけたら何をすればいい?」の
「4.認知症の徘徊には目的がある」で説明していますのでご覧ください。

事例①傷だらけの車体
 80代後半の男性は、妻と出かけた先で行き先を忘れたり、ウィンカーの操作に手間取ることが度々生じていたようです。そして、車体は電柱や車庫入れでぶつけた跡で傷だらけになっていました。
男性の娘が相談して、先生から運転を辞めるように説得したものの、受け入れてもらえなかったようです。
 その後、男性の妻が目を離した隙に車で徘徊する重大な事件が起こってしまいました。一晩中探してふらりと戻って来た際も「どこへ行っていたのか分からない」といった様子だったとのことでした。
話し合っても分かってもらえないと思った男性の娘は、免許返納の手続きをしました。
男性は時間が経つにつれ、所有していた車で運転していたことも忘れてしまったとのことです。

事例②100キロ以上離れた場所で発見
 あるケアマネジャーの方が担当していた利用者の中にも、車で徘徊してしまい目的が分からずやむなく家へ帰られた方や、自宅さえも分からなくなってしまい、昼夜運転し続けて100キロ以上も離れた先で警察に発見・保護された方がいたようです。
赤信号に気がつかず止まらなかったり、歩行者を轢きそうになったりと普段と違う様子があったとのことでした。

上記以外にも、高速道路での逆走も認知症高齢者の事故でよくある事例です。

2.対応策はどうすればいい?

 前節の2つの事例より、車で徘徊に至るまでには兆候があると思われます。

● 行き先を忘れる
● 車の操作を忘れてしまう
● 交通ルールを守れず事故を起こしそうになる

 家族が少しでもおかしいと感じたら「運転をさせない」対応をすることがベストになってくるでしょう。
 しかし、本人は「まだ大丈夫だから」「車がないと困る」などといった理由で意見を聞き入れないことが多く、家族が悩む要因にもなっています。
その場合は以下の対策をお勧めします。

● 車を売却・処分する
● 第三者から免許返納の助言をしてもらう

特に、家族の話は聞き入れてもらえないことが多いため、第三者(主治医や知人など)に言ってもらうのもいいでしょう。
また、ドライブレコーダーを見て自分の運転を見てもらい、運転技術に間違いがないか振り返るのも有効です。

 免許返納以外にも、徘徊対策として
・GPS機器を持たせる
・玄関やベットなどにセンサーを付ける
・地域の徘徊SOSネットワークに登録する
のも良いでしょう。

車で徘徊してしまう前に事前対策を取っておくことで、徘徊を防いだり徘徊したとしても短時間で発見・保護につながります。

3.運転免許の返納方法は?

 本人が運転の仕方に不安を感じていたり、運転をしなくても良い環境になったら免許の返納も検討しましょう。
申請場所・受付時間・必要書類・要件などは都道府県によって異なるので、各都道府県警察の運転免許センターを確認してください。

 自主返納の方法はとても簡単です。
1. 必要書類を揃える
2. 警察署か運転免許センターに提出
自主返納申請をする際は、運転免許証や印鑑など必要なものを忘れずに確認しましょう。

自主返納の際の注意点
 免許証を返納する際に注意点があります。
● 運転免許の停止・取消しの行政処分中の方
● 停止・取消処分の基準等に該当する方
などは自主返納できないので注意しましょう。
自主返納後は免許証がない状態なので、帰りの交通手段もよく考えて申請に行きましょう。

自主返納後の特典は?
 自主返納したあとは、身分証明書代わりとなる「運転経歴証明書」の発行ができます。
この運転経歴証明書は、銀行等の機関で本人確認書類として認められているものです。

 運転経歴証明書を所持していると、各自治体や事業者が実施している特典を受けることができます。
● 電車、バス、タクシー等の運賃割引
● 電動車いす購入料金の割引
● 食材配達利用料金の割引
● 自動車の廃車手続無料
● 交通系ICカードの交付
など特典はさまざまです。各自治体や事業者が実施しているサービスは、高齢運転者支援サイトにて確認できます。

4.まとめ

 社会が高齢者の免許自主返納意識が高まっていたとしても、地方では生活する上で車が必要不可欠なものになっています。
しかし、高齢者による自動車事故が多いのも事実であり、悲しい事故が後を絶ちません。
まずは国が、交通機関の発達と移動手段の支援サービス拡充に率先して取り組むべきだと感じています。

 都市規模に関わらず車を使わなくても気軽に安心して出かけられる、そして誰もが利用しやすい環境になることを願うばかりです。

参考記事
・認知症高齢者の徘徊の実態
・「認知症の人の行方不明や徘徊、自動車運転にかかわる実態調査」報告
・運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果
・警視庁 運転免許証の自主返納について
・高齢運転者支援サイト
・運転免許証の自主返納・運転経歴証明書について

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執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士9年目の30代3児の母。介護職の楽しさを発信するためwebライターとしても活動中。大学卒業後、金融機関に就職するもやりがいを感じられず介護職に転職。デイサービス→結婚を機にリハビリ施設へ。介護士として毎日楽しく高齢者に寄り添いながら働いています。

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