今回は認知症と生活習慣の関係性についてご紹介していきます。
食事や運動による認知症の治療は、現在確立されていません。しかし、最近の研究から「生活習慣」と「認知症」は深い関係にあり、生活習慣の見直しで認知症を発症するリスクを抑える効果があることが分かってきているようです。
生活習慣病とは「食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患の総称です。日本人の死因の上位を占める、がんや心臓病、脳卒中は、生活習慣病に含まれます」と厚生労働省では定義しています。
認知症の約6割を占めるアルツハイマー型認知症は、上記の生活習慣の問題が危険因子となる可能性が指摘されています。
生活習慣の見直しや改善は、高齢化社会において非常に有効な認知症の予防対策となり得ます。
平均寿命が長く長寿の国と言われる日本では、心身ともにできるだけ健康でいることが大切です。
この記事を読んで、ご自身やご家族の生活習慣に関する健康意識が変わっていくきっかけの一つになれると幸いです。
1.認知症と生活習慣の関係
認知症は、記憶力、思考力、判断力、言語能力、行動能力などの、認知機能の損失を特徴とする疾患の総称です。
認知症の症状がひどくなってくると、徘徊や記憶障害(ついさっき食事したことを忘れる)などでご家族がとても疲労してしまうことも。
高齢者に多く見られますが、40代50代の若年者にも発症することもあります。
認知症の原因の一つとして「アルツハイマー型認知症」や「血管性認知症」などがありますが、生活習慣も認知症のリスクに影響を与えることが近年の研究で明らかになってきました。
そして多くの研究で、健康的な生活習慣が認知症のリスクを低減することに繋がると示しています。
以下で詳しく説明していきます。
①睡眠
十分な睡眠を確保することも重要です。睡眠不足や不規則な睡眠は、脳の機能低下や神経細胞のダメージを引き起こし、認知症のリスクを高めることがあります。
成人の睡眠時間の理想は6〜7時間です。なるべく規則正しい睡眠習慣を身につけることを心がけていきましょう。
②身体活動
運動不足は、心血管疾患や糖尿病などのリスク因子を増加させるだけでなく、脳の血流や神経細胞の健康にも悪影響を与え、認知症の発症リスクを高める可能性があります。
そのため、適度な運動は認知症予防に期待できるものであり、有酸素運動や筋力トレーニングなど、定期的な運動が脳の血流を増加させ、神経細胞の健康を促進すると言われています。
ご高齢の方など激しく身体を動かせない方は、椅子に座ってできる簡単な運動でも構いません。また、散歩の時に歩幅を変えてみたり、可能な方は後ろ向きで歩くなど変化を入れつつ運動すると、同時に頭の体操もできます。
③ストレス
慢性的なストレスは、脳の構造や機能に悪影響を与え、認知症のリスクを高める可能性があります。
長期間ストレスホルモンが分泌され続けると、全身の血流を悪くし脳の神経細胞に必要な栄養や酸素が届かなくなります。
その結果、記憶を司る海馬が萎縮しやすくなり認知症を招くとされています。
④適切な食事
高脂肪、高カロリー、高塩分の食事や過剰な間食、糖分摂取、栄養バランスの偏った食事などは、血管や脳の健康に悪影響を与え、認知症のリスクを高めることがあります。
バランスの取れた食事は、脳の健康に重要と言われています。
特に魚やナッツ、果物、野菜には「オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)」という重要な栄養素を含んでおり、積極的に摂取することが推奨されています。
過度な飲酒をしていたり、偏食が気になっていたりする方は上記で挙げた食事や適度な飲酒を意識してみるといいでしょう。
また、コーヒーや赤ワインに含まれるポリフェノールなどには抗酸化作用があり、緑茶に含まれるテアニン(アミノ酸)も、認知機能の低下を抑える作用があると言われているのでおすすめです。
⑤社会的・知的活動
社会的な孤立や孤独は、認知症のリスクを高める要因として知られています。周囲との交流や活動が少ない状況は、認知症の発症と関連しているようです。
社会的な交流や知的な刺激を得ることも認知症予防に効果的であり、趣味を楽しむ、新しいことに挑戦する、友人や家族との交流を深めるなど、脳を刺激する活動を生活の中に取り入れるといいでしょう。
また、物事に新しく挑戦するということは、年齢関係なくいくつになっても脳を刺激することができます。
新しいことに挑戦するのが難しい方は、一言日記をつける、いつもと違うルートで散歩をしてみる、新商品のものを食べてみるなど、身近なものから取り入れてみるのもいいかと思います。
このように、不健康といわれる生活習慣は認知症のリスクを高める可能性が高まります。
そのため健康的な生活習慣の維持や改善は、認知症の予防に重要といえるのです。
健康的な食事、適度な運動、良質な睡眠、ストレス管理、社会的な交流など、健康促進のための生活習慣を心がけることを意識していきましょう。
2.生活習慣改善で予防しよう
生活習慣の改善は、期待のできる認知症予防法の一つです。
健康的な生活習慣を実践することで、脳の健康を維持し、認知症のリスクを低減することに繋がると言われています。
しかし、生活習慣の改善には一時的なものではなく継続的な取り組みが必要となります。
生活習慣改善のポイントは以下の通りです。
● 目標設定と計画
まず、自分自身に合った具体的な目標を設定し、それに向けて計画を立てることをしていくと良いかと思います。
例えば、週に何回運動するか、食事のバランスをどのように整えるかなど、具体的な行動計画を設定していきましょう。
● 継続と忍耐
生活習慣の改善は継続と忍耐力が必要です。
最初は簡単に取り組めることから始め、徐々に取り組む項目を増やしていくことをお勧めします。
なかなか上手くいかず立ち止まったり、戻ってしまったりした時はあまり自分を責めず、再度取り組むことが大切です。
● 環境の整備
生活習慣を改善するためには、環境を整えることも必要です。
例えば、健康的な食材を常備しておく、運動をするためのスペースを確保するなど、環境を整えることで生活習慣改善がより実現しやすくなり、モチベーションアップにもなります。
3.まとめ
現段階で、認知症は食事等による治療法が確立されておらず予防が大切になります。
健康的な生活習慣を実践することで、認知症のリスクを低減することができます。
また、生活習慣の改善には継続的な取り組みが必要ですが、その努力は将来の健康と幸せに繋がっていくものです。
自分自身や大切な家族のために、今日から健康的な生活習慣に変えていきたいものですね。
参考
認知症の基礎知識~認知症の予防につながる習慣(東京都福祉局)
認知症の基礎知識~認知症の人が安心して暮らせるまち・東京を目指して(東京都福祉局)
認知症予防のための食事とは(公益財団法人長寿科学振興財団)
今日から始めたい!食事で認知症予防!(山梨県厚生連健康管理センター)
厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』
生活習慣病とは(厚生労働省e-ヘルスネット)
執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士としてデイケアで働きながら、介護職の楽しさを発信するためWEBライターとしても活動中。読みやすく分かりやすい文章を目指して頑張っています!