徘徊演習

「北海道でもGPSで追跡できるのか?」@北海道マラソン2026

2026年8月30日(日)、北海道札幌市で開催された「北海道マラソン2026」に参加し、認知症徘徊GPSセンターの徘徊演習を実施しました。これまで認知症徘徊GPSセンターでは、マラソン大会やウルトラマラソンなどを活用し、高速道路、山間部、100kmを超える長距離移動など、さまざまな環境でGPS端末の測位状況を確認してきました。そして今回は、徘徊演習として初めて本州を離れて北海道へ。

今回のテーマは、「北海道まで移動しても、GPS端末で継続して追跡できるのか?」です。もちろん、GPSは北海道だから使えないというものではありません。ただ、実際の認知症による行方不明を考えると、「自宅の近所を歩いている」とは限りません。電車やバスなどの交通機関に乗れば短時間で遠方まで移動することもありますし、旅行先など、普段とはまったく違う土地で行方が分からなくなることもあります。今回はGPS端末と一緒に飛行機で北海道へ移動し、さらに札幌市内を42.195km走りながら、10分ごとの自動測位がどのように記録されるのかを確認してみました。

■認知症による行方不明者は年間17,345人
今回の記事を書くにあたり、警察庁が2026年に公表した最新の「令和7年における行方不明者届受理等の状況」を確認しました。2025年中に、認知症または認知症の疑いを原因・動機として行方不明者届が出された人は、17,345人。前年から776人減少していますが、依然として非常に多くの方が行方不明になっています。認知症による行方不明者数は、「2023年19,039人」「2024年18,121人」「2025年17,345人」となっています。

そして今回の警察庁資料で、認知症徘徊GPSセンターとして特に注目したいデータがありました。それが、「GPS機器等の有効性」です。2025年中にGPS機器や紛失防止タグなどを活用して所在確認または死亡確認された認知症行方不明者は139人。そのうち118人、約85%が、行方不明者届を受理した当日に所在確認されています。警察庁も、GPS機器等について「迅速・的確な発見活動を展開する上で有効」としています。

さらに、非常に象徴的な事例も紹介されています。認知症のある80代男性が自宅から行方不明となり、家族が持たせていたGPS機器の位置情報を確認したところ、電車に乗って県外へ移動していることが判明。位置情報をもとに捜索した結果、届出受理から約2時間後、自宅から約130km離れた駅で無事発見・保護されたという事例です。「認知症の徘徊」と聞くと、自宅周辺を歩いている姿を想像しがちですが、実際には100kmを超えて移動することもあります。だからこそ今回、北海道までGPSを持って行ってみることにも、徘徊演習として意味があるのではないかと思いました。

■徘徊演習概要

日程:2026年8月30日(日)
場所:北海道札幌市
大会:北海道マラソン2026
距離:42.195km
使用機器:GPS端末
測位:10分ごとの自動位置検索

今回はGPS端末を身につけて北海道マラソンを走りました。北海道マラソンのコースは札幌市中心部から北西方向へ大きく進み、その後再び札幌中心部へ戻ってくるコースです。今回確認したのは、認知症徘徊GPSセンターの事務局がある横浜市から約1,000km離れた北海道でも、移動状況を継続して確認することができるのか、という点です。

■結果:北海道でも42.195kmの移動をしっかり追跡
大会終了後、GPS管理画面を確認してみました。結果はご覧の通りです。北海道でも問題なく測位され、札幌市内を移動していく様子を継続して確認することができました。管理画面には、スタート前の8時台からゴール後の12時台まで位置情報が記録されています。画面右側の履歴を見ても、「8:20」「8:30」「8:40」「8:50」「9:00」「9:10」・・・と、ほぼ設定した10分間隔で位置情報が取得されていました。

地図上でも、札幌市中心部から北西方向へ進み、再び中心部へ戻ってくる北海道マラソンの移動経路に沿うように測位されています。今回の結果を見ると、「今どこにいるのか」
だけではなく、「10分前はどこにいたのか」「どちらの方向へ移動しているのか」ということまで把握できます。これは認知症による行方不明者を探す際には、とても重要だと思います。例えば、先ほどの警察庁の事例のように電車で移動している場合、現在地だけではなく、その直前の移動履歴が分かれば、利用している路線や進行方向を推測する手がかりになります。GPSの価値は、一つの「点」を表示するだけではなく、複数の点を時系列でつなぎ、「移動」を把握できることにもあるのだと思います。

■旅行先で行方不明になるケースもある
警察庁の最新資料には、今回の北海道での演習と重なる事例も紹介されています。

認知症のある70代女性が、旅行先で行方不明になったケースです。自治体が防災行政無線などで情報を発信し、防犯カメラなどから進行方向を確認。その後、情報を聞いた地域住民によって、約6時間後に無事発見されています。認知症の方が外出するのは、自宅の周辺だけではありません。家族旅行、帰省、冠婚葬祭などで、普段とは違う場所に行くこともあります。知らない土地で行方が分からなくなれば、本人だけではなく、探す側も周辺の地理が分かりません。そう考えるとGPSは、「自宅周辺での徘徊対策」だけではなく、知らない土地で現在地を把握するための手段としても意味があるのだと思います。

■そして真夏は「発見までの時間」がさらに重要
今回、北海道マラソンを走りながら、もう一つ考えさせられたことがあります。それが、真夏に行方不明になった場合、発見までの時間がさらに重要になるということです。北海道マラソンは国内でも数少ない夏開催のフルマラソンです。大会側も熱中症対策を重視しており、2026年大会では新たに13.2km地点に氷の配布ポイントが設置され、従来の31.3km地点と合わせて2カ所で氷が提供されていました。また、一部の給水所には新たに水かぶりポイントも用意されていました。さらに、重症熱中症が疑われるランナーについては、2022年大会からアイスバスを準備し、必要に応じて直腸温を測定したうえで身体を冷却してから医療機関へ搬送する体制が取られています。私自身も、給水所でもらった氷をかなり活用しました。氷を手に握りながら走ったり、ウェアの中に入れたりして、身体に熱をため込まないことを意識していました。

■認知症の方の場合は、自分で暑さを避けられないこともある
私たちであれば、「暑くなってきたから飲み物を飲もう」「日陰で休もう」「身体を冷やそう」と、自分で判断できます。しかし、認知症によって行方不明になっている方の場合は、必ずしもそうとは限りません。暑い場所を歩き続けたり、水分を摂らなかったり、身体の異変を周囲へうまく伝えられなかったりする可能性もあります。だから夏場の行方不明では、「どこにいるのかを把握すること」と同時に、「できるだけ早く発見すること」がより重要になるのだと思います。警察庁の最新資料でも、2025年中に所在確認または死亡確認された認知症行方不明者16,729人のうち、約95%が届出受理から3日以内に確認されています。警察庁も、早期に迅速な発見活動を展開する重要性を指摘しています。

■GPSは「距離」ではなく「時間」を縮める道具
今回、北海道までGPS端末を持って行き、42.195kmを走ってみて改めて感じたことがあります。GPSの大きな価値は、行方不明になった人が遠くへ行かないようにすることではなく、発見するまでの時間を短くすることなのかもしれません。今回の警察庁データでも、GPS機器等を活用して発見された認知症行方不明者139人のうち、約85%が届出当日に所在確認されています。近所にいても。100km離れていても。旅行先でも。そして今回のように北海道でも。「今どこにいるのか」「どちらへ移動しているのか」を、できるだけ早く知る。GPSは、そのための一つの有効な手段なのだと思います。

◎まとめ
今回の北海道マラソン2026では、徘徊演習として初めて本州を離れ、北海道でGPS端末の測位状況を確認しました。結果として、北海道でもスタート前からゴール後まで、ほぼ設定通り10分間隔で位置情報を取得し、札幌市内を42.195km移動していく様子を確認することができました。認知症による行方不明は、自宅の周辺だけで起きるものではありません。実際に警察庁の資料には、電車で約130km移動した事例や、旅行先で行方不明になった事例も紹介されています。さらに夏場であれば、行方不明になっている時間が長くなるほど、熱中症という別のリスクも考えなければなりません。

GPSで位置を把握する。移動方向を確認する。できるだけ早く発見する。そして無事に保護する。GPSは万能ではありません。しかし、「発見までの時間を短くする」ための有効な道具の一つであることを、今回の北海道での徘徊演習と警察庁の最新データから、改めて確認することができました。ということで、北海道での42.195km徘徊演習、無事終了です。次の徘徊演習は、どこになるのでしょうか。

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