徘徊演習

徘徊演習「追跡・見守り」@飛騨高山ウルトラマラソン

2025年6月8日(日)、岐阜県高山市で開催された「第13回飛騨高山ウルトラマラソン」にて、GPS端末を活用した徘徊演習「追跡・見守り」を実施しました。今回は、当社(ケアミックス株式会社)のスタッフ3名が参加。1名は100kmコース、2名は71kmコースに出場し、実際の長距離移動を伴う中での追跡・見守り演習を行いました。

飛騨高山ウルトラマラソンは、標高差が激しく自然豊かなコースを走破する大会で、体力・精神力の限界に挑む場でもあります。今回はその厳しい環境を逆手にとり、認知症高齢者が山間部で行方不明になった際の探索・見守りのヒントを得ることを目的としました。探索・見守りは、認知症徘徊GPSセンターの事務局がある神奈川県横浜市から行いましたが、実際のご利用時においてはパソコンやスマートフォンに依存する「アプリ」ではなく、インターネットで専用ページにアクセスし、ログインすることで全国・全世界から追跡・見守りを閲覧人数に制限はなく、同時に行うことができます。

■実施概要
日  程:2025年6月8日(日)
場  所:岐阜県高山市(スタート・ゴール:高山市役所)
参 加 者:3名(100kmコース1名、71kmコース2名)
使用機器:GPS端末(10分毎の自動位置検索)
天  候:晴れ(最高気温29℃)

■実施内容
大会当日は朝4時30分に100kmの部がスタート、71kmの部は朝5時20分スタートでした。参加者のうち71キロに参加する事務局員がGPS端末を携帯し、事務局ではリアルタイムにその位置情報を把握。参加者は模擬的に「徘徊者」となり、山間部での移動や停滞(給水所)を通して、見守りの難しさやGPSの有効性を検証しました。スタート前のルールは「14:30前後にゴールで集合ね。リタイヤかゴールしたらラインで共有ね。」というシンプルな設定です。

地図に表示されている通り、緑色の時計マークは正確に位置測位ができていますが、「日枝神社」右側の「丹生川〔にゅうかわ〕」付近では、赤色の時計マークとなり、測位精度は低い状態となっています。この地域は山道ではないものの、「山間部・峡谷」となっており、GPS(全地球測位システム)は非常に便利な技術ですが、環境によっては電波が届きにくく、位置情報の取得が不安定になることがあります。山に囲まれた場所ではGPS衛星との接続数が減少することや電波が山肌で反射する「マルチパス干渉」により誤差が生じたものと考えられます。このような状況下においては、ログイン後に「現在地測位」をすることで解消されるケースもあります。

≪測位精度≫
緑色の時計マーク:測位精度【高】誤差範囲100m程度
青色の時計マーク:測位精度【中】誤差範囲400m程度
赤色の時計マーク:測位精度【低】誤差範囲400m以上

■気づき・今後に向けて
山間部では電波状況の悪い区間もあり、一時的に測位精度が低くなる場面もありましたが、概ね安定して追跡・見守りが可能で徘徊演習としても有意義でした。飛騨高山という特殊な地形での徘徊演習は、都市部での見守りとはまた異なる視点を得る貴重な機会でした。今後は、より多様な環境・状況に応じたGPS活用や可能性についても検討していきます。

■編集後記
飛騨高山マラソンは、「過酷」「厳しい」「完走率」「難易度」と気になる点も多いかと思いますが、71キロの印象としては上り坂は多少距離が長いものの、そのあとにしっかりと平坦に近いコース、下り坂もあり、50キロ地点頃までは上り基調ですが、一番辛い残り21キロが下り基調なので逆に走りやすい、後半に下りは助かる~、という印象でした。ただ、100キロは千光寺へと続く名物の急勾配と108段の石段が待ち受けているようなので、ここが過酷や厳しさのポイントで、体力と精神力が必要になるかと思います。

ちなみに「第13回飛騨高山ウルトラマラソン」の完走率は、過去3回で比較すると最も低かったそうです。天気も気になったので調べてみると、最高気温が29℃だったのでここが影響したのかもしれませんね。ただ、日が出ている時間よりも、曇りの時間の方が感覚的には長く(2(晴):8(曇))また山間部で日陰だったので熱中症が気になるという程度ではなく、程よくカラっとしていたので気持ち良い気候でした。

≪男女平均完走率100km / 71km≫
11回・・・100km:72.9% / 71km:84.9%
12回・・・100km:70.9% / 71km:85.5%
13回・・・100km:67.0% / 71km:81.9% ←今回([2025年]第13回飛騨高山ウルトラマラソン)

≪平均気温/最高気温/最低気温/降水量/風速≫
11回・・・平均気温18.3℃ / 最高気温21.6℃ / 最低気温16.7℃ / 降水量16.5mm / 風速1.1m/s
12回・・・平均気温18.9℃ / 最高気温24.0℃ / 最低気温15.8℃ / 降水量 0.0mm / 風速2.8m/s
13回・・・平均気温20.1℃ / 最高気温28.6℃ / 最低気温14.2℃ / 降水量 0.5mm / 風速0.7m/s ←今回([2025年]第13回飛騨高山ウルトラマラソン)

初参加した飛騨高山ウルトラマラソンの魅力は何といっても、飛騨の雄大な自然と歴史を全身で感じられるところではないでしょうか。あと、給水所のご当地グルメも魅力のひとつです。事前に57.2km地点の給水所には「飛騨牛」が提供されると知っていたので、ウルトラマラソン中に霜降り食べられるかと思っていたものの、不思議なもので「あともう少しで飛騨牛だ」と楽しみに変わり、フルマラソンの42キロを過ぎたあたりからモチベーションアップとなりました。給水所について手前から「しそサイダー」を飲んで、「みたらし団子(あれ、みたらしじゃなく醤油だった気が)」を食べて、メインディッシュの「飛騨牛」をおいしくいただきました。個人的には程よく溶けた冷凍の「パインスティック」「りんごげんこつ」が最高でした。あと、是非口コミの参考として欲しいのが、給水所の魅惑の誘いです。例えば、給水所毎に炭酸の種類が違うんです。コーラにスプライト、湘南ゴールドエナジー、しそサイダー、清見サイダー、これがまたマラソン中って糖分とカフェイン、炭酸による刺激と爽快感がたまらないんです。他にもリンゴジュース、トマトジュース、サンキスト・レモン、ポカリスエット、、、何を参考にしていただきたいかそれは「飲みすぎ・飲みすぎ注意」です。これ、本当に気を付けてください。私も調子に乗って飲んで食べてお腹タプタプになりましたし、一緒に走ったスタッフもトイレが多く(笑)

飛騨高山ウルトラマラソン、とっても素敵なウルトラマラソンでした。私たちは前泊して、前日に「飛騨の里」を観光しましたが、観光中もボランティアの人に「明日出られるんですか?頑張ってください。ボランティアで参加します」とお声がけいただいたり、当日のスタッフ、ボランティア、応援の方々も何だか皆温かい雰囲気、歓迎雰囲気なんです。あと、感動したのが当日荷物を預ける施設でいただける高山市内の子供たちが書いてくれた直筆のメッセージカードです。私のは丹生川中の1年生が書いてくれたメッセージでしたが、「ガンバ」何て書いてあるんですよ。走っている最中も「ガンバ」って思い出して「ガンバリマシタ」。帰宅してもう一度読んでみると小さく「丹生川市所前ではえんそうもしている。ぜひきいて下さい!!(原文のママ)」と、、、まさか、そこは「飛騨牛」が提供されたところではないか。メッセージに気づいたら一番前で聞いて、そうしたら1時間早くゴールできたはずが、若干心残りですが、是非参加される方は、メッセージカードは隅までしっかり読みましょう。

ということで長くなりましたが、徘徊演習「追跡・見守り」@飛騨高山ウルトラマラソンはこれにて終了です(無事全員予定時刻付近にゴールしました)。飛騨高山という山間部で長時間の徘徊演習で新たな気づきもありました。認知症徘徊で精神的な負担がかかっているご家族や関係者、ご本人のお役に立てればと思います。

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