認知症徘徊コラム

全国の認知症徘徊対策〜GPS導入自治体編〜

 日本全国で実施されている認知症による徘徊対策には、自治体・警察・介護施設・民間企業等が連携し様々な取り組みをしています。
それぞれの自治体によって施策内容は様々ですが、本人やご家族にとって非常に心強いSOSネットワークになっていることでしょう。

認知症の徘徊対策でGPSを使用するメリットは主に以下の

1. 迅速な発見につながる
2. 家族の安心を得られる
3. 本人の安全確保につながる

です。

認知症の「徘徊」に対する自治体の取組み|GPS機器がすぐに借りられない課題も」の記事では、全国の自治体が徘徊対策のために取り組んでいる内容をご紹介しました。

 今回の記事では、認知症患者の徘徊対策にGPSを導入している自治体について説明していきます。
最後までぜひご覧ください。

1.徘徊対策にGPSを導入している自治体

 認知症の方の徘徊対策として、GPS機器を活用している自治体は多数存在します。
以下にいくつかの事例を紹介していきます。

● 群馬県高崎市

 高崎市では平成27年10月1日から「はいかい高齢者救援システム」を運用しており、徘徊して行方不明になることを防ぐために、GPS機器を無料で貸し出しています。
 対象者は「市内在住の65歳以上、認知症の周辺症状である徘徊行動がみられる高齢者を介護する家族及び介護者」です。
 GPS機器を身につけた高齢者が行方不明になってしまったとき、見守りセンターが24時間365日の対応で位置情報を介護者の携帯電話などに送信し、捜索や保護に役立てていけるようサポートしています。
また、家族や介護者が遠方などにより捜索に行けない場合は、位置情報や顔写真を手がかりに、見守りセンターの職員や警察が保護を行ってくれるようです。

● 兵庫県三田市

 三田市では、認知症高齢者の早期発見と安全確保のため、GPS端末を無償で貸与する事業を実施しています。
 対象者は「三田市に居住し、要支援・要介護認定を受けている在宅介護者で、認知症により帰宅困難となる恐れがある方」となっています。
また、初期登録料や月額使用料は市が全額負担し、利用者は通信料や充電時の電気料金のみを負担します。

● 島根県奥出雲町

 奥出雲町では、令和5年12月より「認知症等により行方不明となった高齢者を早期発見し事故防止につなげ、高齢者の安全確保とその家族等への支援を図ることを目的に、GPS機能を利用して位置情報を検索することができる専用端末の貸出」をするサービスを実施しています。
 対象者は、認知症により道に迷うことがある方を在宅で介護している親族で、条件は雲南地域認知症高齢者等見守りSOSネットワーク支援事業の事前登録をされていることです。

 上記三つは無料でGPSを貸出している自治体を紹介しました。
次は、助成サービスをしている自治体を一部ご紹介していきます。

● 奈良県大和郡山市

 大和群山市では、実費費用を助成することで介護者の負担を軽減し、安心して介護ができる環境を整備することを目的とし、GPS機器を利用するときに必要な通信費の実費費用を月1,000円を上限に助成しています。
GPS機器の通信費が助成対象のため、貸与費用は助成対象外となっているため注意が必要です。
また、助成を受けるには
● 本市に居住し、介護保険制度での貸与を受けたGPS機器を利用している人
● 大和郡山市認知症高齢者等SOSネットワーク事業に登録している人
の二つの条件を満たしている必要があるそうです。

● 岐阜県岐阜市

岐阜市では、認知症高齢者が行方不明になった際の早期発見と認知症の方の安全確保・家族の負担軽減を目的としており、GPS機器の購入費を最大2万円まで助成する取り組みを行っています。
 対象は、認知症高齢者等を同居または通いで介護する方で、認知症高齢者等が下記の1から3のすべてを満たす必要があります。
● 認知症高齢者等本人が、事前審査の申込み時点で、岐阜市に住民票があること
● 認知症高齢者等本人が、事前審査の申込み時点で、岐阜市内の自宅で生活していること
● 認知症高齢者等本人が、行方不明になるおそれがあること
です。

上記で紹介した徘徊対策にGPS関連のサービスを導入している自治体は一部です。

各自治体で条件や内容が異なりますので、詳細については各自治体の公式ウェブサイトや担当窓口にお問い合わせするといいでしょう。

 また全国的な取り組みとして、認知症徘徊GPSセンターでは全国47都道府県でGPSサービスを提供しており、手軽に利用できるGPS端末を提供し家族の負担軽減に寄与しています。
 認知症の徘徊に特化した独自のアプリケーションを内蔵しているため、認知症の方の安全な外出と行方不明時の早期発見が促進されるとともに、本人やご家族への支援と安心に繋がっていくかもしれませんね。

2.今後の課題

 自治体が徘徊対策にGPS関連のサービスを展開していても、いくつか課題が残っていることもあります。

①費用や手続きの負担

● 自治体がGPS機器を貸与しても位置情報を確認するための機器(スマートフォン、タブレットまたはPCなど)は自己負担必要。
● 助成制度があっても、申請手続きが大変で利用しづらいという声も
操作方法などアフターサービスが必要になる場合もまた、サービスを受けるには介護認定がないと受けられないといったものもあるため介護認定の手続きも必要になり、その分負担も大きくなっていきます。

②GPSの通信環境の問題

 GPSは建物の中やビルの合間、地下では電波が届きにくく位置情報が正確に出ないことや、すぐに更新されないといった問題が起こる可能性もあります。

③ 行方不明時の捜索体制との連携不足

 GPSで位置情報が分かっても、家族や地域のチームがすぐに対応できる体制が整っていないと、早期発見が難しくなります。
一部の自治体では、警察や地域ボランティアと連携して捜索する仕組みを作っていますが、全国的にはまだ普及していない部分もあり課題が残っています。
 また、認知症で徘徊している方なのかどうか分からない方も多いでしょう。
こちらの 「認知症で徘徊している可能性のある方を見つけたら何をすればいい?」 記事では、徘徊かどうかの見分け方のポイントや、対応について記事にしています。
よかったら参考にしてみてください。

 上記3つ以外にも、本人がGPSを身につけない・持ちたがらないことや、位置情報を常に把握することは、本人の自由を奪ってしまうのではないか?などプライバシーの課題も挙げられます。

3.まとめ

 GPSは徘徊対策として有効ですが、まだまだ課題も多いこともあり自治体ごとの工夫が求められます。
NHKがSOSネットワークが稼働する上での課題を各都道府県に複数回答で聞いたところ
「事業を知らない住民が多い」・・・66%
「1人暮らしの高齢者で登録に至らない人が増えている」・・・47%
ということが明らかになったようです。

自治体だけでなく、家族や地域社会、警察・福祉が一体となった支援体制を構築し、周知することで、より安心できる環境を整えることが求められます。

 今後、技術の進化や行政の支援拡充とともに、GPSを活用した徘徊対策のさらなる発展が期待されるでしょう。

参考
高崎市認知症による徘徊行動がみられる家族をお持ちの方へ(はいかい高齢者救援システム(GPS))
奥出雲町認知症高齢者等見守り支援事業
三田市認知症高齢者見守り用GPS端末貸与事業
大和郡山市認知症高齢者等見守りGPS機器利用助成事業について
岐阜市認知症高齢者等GPS機器等購入等助成金交付事業
三菱総合研究所「地域における通信環境の実態調査 結果報告③:8通信環境の地域間格差に対する課題認識」

https://www.ninchisho-haikai-gps.com/gps_rn/wp-content/themes/cure_tcd082/img/common/no_avatar.png

執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士としてデイケアで働きながら、介護職の楽しさを発信するためWEBライターとしても活動中。読みやすく分かりやすい文章を目指して頑張っています!

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