「またいなくなったかもしれない…」
「何度も何度も徘徊してしまう」
徘徊をする認知症家族の介護には多くの悩みが伴います。特に中等度の認知症を患っている場合、徘徊は避けられないこともあるでしょう。
どれだけ鍵をかけても、防犯グッズを利用しても、すり抜けて出て行ってしまう。
見守りたい気持ちはあるものの、四六時中見張っているわけにもいかないのが現実です。
認知症患者が徘徊で行方不明になってしまった場合、ご本人の命を守るためにも速やかな対応が必要になります。
そんな時に役立つアイテムの一つが「GPS機器」です。
この記事では、認知症の親を介護する立場から、徘徊の悩みをまとめつつ、GPSが“できること”と“できないこと”を簡単に紹介していきます。
同じように悩んでいる方へのヒントになれば幸いです。
認知症の徘徊に不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
1.繰り返す「徘徊」
「また徘徊…?」
徘徊に気づいた瞬間、一気に不安や焦りが押し寄せます。
早朝・夜中、雨でも関係なく外に出てしまい、突然いなくなった家族を探すのは本当に大変です。
このような生活が続くと介護者の身も心もボロボロになり限界がきてしまいます。
認知症を患うと、本人には「徘徊している」という意識がありません。
そのため徘徊を止めるのは、ご家族にとって非常に大変なことで、何度も繰り返されると「自分の対応が悪いのでは…」と責めてしまうこともあるかと思います。
そのようなときに、徘徊対策として「GPS機器」の利用は有効です。
実際、GPSは徘徊対策として注目されるアイテムの一つとされており、助成の対象となっている自治体も多くあります。
2.介護者のストレス
介護を常にしていると、介護者の精神的なストレスや日常生活における弊害があるかと思います。
1. 「目を離せない」ことへのプレッシャー
● いつ徘徊するか分からないという不安がある
● 外出中や夜間にも気が休まらず、慢性的な睡眠不足になる
● 「自分が見ていない間に何かあったらどうしよう」という緊張感が常にある
2. 自己嫌悪に陥ることも
● 怒ってはいけないと分かっていても、同じことの繰り返しにイライラしてしまう
● 徘徊で見つけたときに「なんでこんなことを…」と怒ってしまい、後から後悔
● 「もっと優しくできたはずなのに」と自分を責めることがある
3. 介護と自分の生活の両立の難しさ
● 仕事や家事、子育てとの両立が難しい
● 自分の時間がまったくなくなり、趣味や外出も制限される
● 友人関係が希薄になり、孤独感を感じることも
4. 家族内の役割の偏り
● 兄弟姉妹がいても介護の負担が自分に集中し、不公平感が募る
● 介護方針や判断を巡って家族間で意見が対立することも
5. 将来への不安と経済的負担
● これがいつまで続くのか分からないという漠然とした不安
● 介護にかかる費用(見守り機器、通院、施設検討など)も家計に影響
● 「自分が倒れたらこの人はどうなるのか」という責任感に押しつぶされそうになる
これらのストレスや葛藤は、多くの人が「一人で抱え込んでしまう」ことで深刻化します。
だからこそ、以下のようなサポート機関をできるだけ早めに活用することも大切です。
● 地域包括支援センターやケアマネジャーなどに相談
● GPSや見守りセンサーなどの導入(介護保険が使えることも)
● 同じ立場の人との情報交換(SNSや家族会など)
● デイサービスやショートステイの利用
3.なぜ徘徊は起きるのか?
認知症患者の介護をしていると「なぜ徘徊をするのか?」と思うこともあるでしょう。
しかし、徘徊には本人なりの“理由”があるとされています。
例えば「出勤の時間だから(定年退職後なのに)」「夕飯の買い物に行く時間だから」「畑が心配だから」など、昔から習慣化されていたことが本人のなかで外出のきかっけになっていることがあります。そして外に出たあとで、自分がどこへ行こうとしていたのか分からなくなり、結果として”徘徊”と呼ばれる行動に繋がってしまうのです。
また、認知症になると「記憶力」や「判断力」が低下し「今どこにいるのか」「何をしていたのか」といった基本的な情報があいまいになり、過去の記憶と現在の状況など正確に認識しにくくなってしまうこともあります。これらは「見当識障害」と言われます。
徘徊は「何の目的もなくウロウロと歩き回ること」と言われていますが、本人にとっては“意味のある行動”になっているのです。
それを無理に止めようとすると、逆に不安や混乱を引き起こすこともあります。
だからこそ「なぜこのような行動が起きるのか?」という視点を持つことが、徘徊への理解になっていくのではないかと思います。
4.GPSで「できること」
GPS機器は徘徊対策に非常に有効であり、利用を勧めたいものの一つです。
① 現在地がわかる
アプリやパソコンから、今どこにいるのかをリアルタイムで確認できます。道に迷っても「どこを歩いているのか」がわかるだけで、行動の予想が立てやすくなります。
② エリアから出たら通知
自宅周辺に“安全エリア”を設定しておくと、そこから出たタイミングでスマホに通知が来る機能があります。気づいたときにすぐに動けるので、迅速な保護に繋がります。
③ 介護保険で利用できる場合も
地域によっては、介護保険の福祉用具レンタル対象としてGPS機器を借りられることもあります。自治体によって異なりますが、介護保険で利用可能であれば自己負担も軽く済み、導入のハードルが下がります。
5.GPSで「できないこと」
GPSでできないこと、デメリットとなる部分を紹介します。
① 常に持ち歩いてくれるとは限らない
バッグに入れたまま忘れて外出したり、服を着替えるときに外してしまったり。本人の理解がないと、そもそも機能が十分に発揮できない場面も。
弊社では、持たせ方事例を紹介しており、持ち出ししやすいオプションアイテムも用意しています。
② 位置がわかっても、すぐに駆けつけられるわけではない
場所がわかっても、自宅から遠かったり、移動中だったりすると、すぐに迎えに行けるとは限りません。できるだけ早く保護できるよう、その場の対応力も必要となります。
③ 充電・管理の手間がかかる
電池切れで通知が来なかったなどの事態を避けるために、定期的に充電しなくてはいけないことや、故障した時の修理対応(問い合わせなど)もしないといけません。
6.まとめ:限界が来る前に
認知症による徘徊は、家族にとって大きな負担となりますが、「完璧に防ぐ」よりも「見守れる体制を整える」ことが大切です。GPSは、認知症の親を見守る手段として心強いツールの一つです。
また、日々の声かけや環境づくり、地域とのつながりといった“人の関わり”も欠かせない要素です。
一人で抱え込まず、介護サービスや見守り機器、周囲のサポート機関などに頼ることで、少しずつ不安を減らすこともできます。
「何かあってから」ではなく、「今からできること」を、少しずつ始めていきましょう。
介護はひとりで抱えるとつらくなることもあります。必要なときに、必要なツールや支援を使いながら、無理せず続けていける形を見つけていけたらいいですね。
参考
認知症ケア法-認知症の理解
持たせ方事例
認知症施策の現状
執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士としてデイケアで働きながら、介護職の楽しさを発信するためWEBライターとしても活動中。読みやすく分かりやすい文章を目指して頑張っています!