認知症徘徊コラム

認知症とストレスの関係とは?|ストレスが与える影響と支援

 「認知症」は、高齢者に多く見られる脳の機能が低下する症状であり
 ● 記憶障害
 ● 思考力の低下
 ● 行動や言動の変化
などの症状が現れます。
 この認知症の進行にはさまざまな要因が関わっていますが、その中でも見逃されがちなのが「ストレス」です。
日々の生活の中で受けるストレスは、認知症の進行を促進する可能性があり、その適切な管理と対策が重要になってきます。

今回の記事では
 ● 認知症とストレスの関係
 ● ストレス軽減方法について
 ● GPS機器などツールを活用するメリット
を中心にご紹介します。
安心して生活できる環境を整えて、できる限りストレスを取り除いてあげることが良いでしょう。
ご興味のある方はぜひ最後までご覧ください。

1.認知症とストレスの関係

 「ストレス」が健康に悪影響を与えることは広く知られていますが、認知症患者にとっては特に深刻な問題です。
認知症の進行は、単なる脳の老化や遺伝的要因だけでなく、精神的および身体的なストレスにも大きく影響されることがあるようです。

2.ストレスが脳に与える影響

 「ストレス」を感じると、私たちの体はコルチゾールというホルモンを分泌します。
このコルチゾールは、短期的には体を守る役割を果たしますが、慢性的なストレスにさらされ続けると、脳の神経細胞にダメージを与えることがわかっています。
特に注意したいのが、記憶や学習を司る海馬という部位に悪影響を与え、認知機能を低下させる恐れを持っているということです。
また、ストレスによって引き起こされる不眠や不安、うつ状態は、認知症患者の行動や感情にさらなる混乱をもたらし、結果的に病状を悪化させる可能性があります。

3.行動制限とストレスの悪循環

 認知症患者が徘徊や突発的な行動を取ることはよくみられ、このような行動を家族や介護者が不安に思うことで「行動を制限する」という結果につながってしまうこともあります。
しかし、行動の制限はストレスを増大させ、症状が悪化するリスクが高まってしまうことも。
 例えば、外出や自由な活動が制限されると、認知症患者は自分が「閉じ込められている」と感じやすくなり、強い不安や孤独感、混乱を感じます。
さまざまな不安感はさらに認知機能の低下を促し、状況が悪化するという悪循環に陥りやすくなってしまいます。
こうしたストレスを減らすためには、患者の行動を無理に抑え込むのではなく、自由を尊重しつつ安全を確保するための支援が必要となります。

4.ストレス軽減のためにできること

 認知症患者のストレスを軽減し、病状の進行を抑えるためには、適切なサポートが不可欠です。
以下の方法は、認知症患者が安心して生活を送るために有効な手段となるでしょう。
安全な環境作り
 まず、認知症患者が制限なく動き回れる安全な環境を整えることが大切です。
自宅では、家具や段差など、転倒のリスクを減らす工夫をすることで、徘徊の際の事故を防ぐことができます。
さらに、外出の際にも安全を確保できるように、周囲と協力して安全を確保する環境にすることが望ましいです。
現実的にはなかなかうまくいきませんが、周囲の理解と協力を得るほか、自治体で取り組んでいるサービスなどもうまく活用していきましょう。
 認知症の「徘徊」に対する自治体の取り組み|GPS機器がすぐに借りられない課題も の記事でも、全国で取り組んでいる徘徊対策の例を紹介しています。
興味のある方は上記の記事をぜひご覧ください。

5.コミュニケーション

 認知症患者は、言葉で自分の感情やニーズを表現することが難しくなることがあります。
そのため、介護者は非言語的なコミュニケーションや、穏やかな声かけを心がけることが大切です。
リラックスできる環境を作ることで、患者のストレスが軽減され、病状の悪化を防ぐ助けにもなります。

● ストレス発散の方法

 認知症の進行を遅らせるためには、以下のようなアプローチが有効でありストレス発散に良いとされています。
これらは、脳の健康を維持し、認知機能の低下を抑えるための方法です。

● 運動

適度な運動は、脳への血流を増加させ、認知機能の低下を遅らせることが示されています。
特に、有酸素運動や筋力トレーニングは、記憶力や集中力に良い影響を与え、ウォーキングや水泳、ダンスなどが推奨されています。

● 脳トレ・趣味活動

パズルや読書、趣味の活動など、脳を使う活動(脳トレーニング)も認知機能の維持に役立つとされています。
これにより、脳の神経ネットワークが刺激され、記憶や思考力を維持できます。

● 健康的な食事

地中海食やDASH食(高血圧予防食)が、認知症の予防に効果的とされています。
これらの食事は、果物、野菜、魚、全粒穀物を中心にした食事で、脳に必要な栄養を供給し、酸化ストレスや炎症を抑えます。

● 社会的交流

家族や友人との交流、ボランティア活動、クラブ活動など、社会的なつながりを維持することが、認知機能を高めることが示されています。
いわゆる「孤立」を防ぐことにより、うつ病や認知症の進行を抑えることが期待できます。

● 睡眠

良質な睡眠も認知症の進行を遅らせるために重要です。
十分な睡眠は脳が休息し、記憶の整理や老廃物の排出を助けるため、アルツハイマー病などの進行を抑える効果があります。

● 高血圧や糖尿病などの管理

高血圧や糖尿病などの慢性疾患は、認知症のリスクを高めるため、これらの病気を適切に管理することが進行を遅らせるために大切です。
定期的な健康チェックや、医師の指導に従った治療が必要です。

これらの方法を組み合わせて実践することが、認知症の進行を遅らせる効果的なアプローチとされています

6.GPSの活用|自由と安全の両立

 認知症患者が自由に動き回れる環境を作るための一つの有効な手段として、GPS機器の活用があります。
従来の行動制限を軽減しつつ、家族や介護者が患者の居場所を把握できるため、安心して生活を送ることができます。
GPSとは?
 GPS(Global Positioning System)は、人工衛星を利用して位置情報を特定するシステムです。
これを活用したウェアラブルデバイスや小型端末を認知症患者に持たせることで、外出中でもその居場所を確認できるようになります。
もし徘徊してしまい行方不明となった場合でも、すみやかに発見しやすくなるため、事故や迷子、事件に巻き込まれるリスクを大幅に減らすことができます。

7.自由と安全のバランス

 GPS機器を活用することにより、行動制限を強めるのではなく、自由に動ける生活を確保しながら認知症患者の安心・安全な生活を見守ることができます。
自由と安全を確保することにより、認知症患者自身がストレスを感じにくくなるとともに、より自由で安心感のある生活を実現し、自分らしい暮らしを楽しむことができます。

8.まとめ

 認知症とストレスの関係は非常に複雑であり、ストレスが病状の進行に大きな影響を与えることは明らかです。
行動を制限することでストレスが増大し、さらなる認知機能の低下を招くリスクがありますが、GPS機器などの技術を活用することで、患者の自由と安全を両立させることが可能です。
 認知症患者が安心して過ごせる環境を整え、ストレスを減らすためのサポートを提供できたら良いですね。
そのためにも、技術の活用や自治体の取り組みやサービスなどを通じて、患者の自尊心や自由を尊重した介護を目指しましょう。

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執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士としてデイケアで働きながら、介護職の楽しさを発信するためWEBライターとしても活動中。読みやすく分かりやすい文章を目指して頑張っています!

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