「 認知症の家族を旅行に連れて行きたい」
「家族との良い思い出を作りたい」
「気分転換をさせてあげたい」
そう思っていても、認知症の家族を旅行に連れて行くことに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
どんな対策をしたら良いのか、旅先でトラブルがあった場合の対処法など認知症の家族との初めての旅行は、特に一歩踏み出すのに相当な勇気がいるかと思います。
「旅行」は認知症患者にとって、新しい経験や環境の変化があるため、普段以上の疲労やストレスも伴います。
家族との良い思い出を作るには、しっかりとした準備と計画がポイントになります。
無理のない旅行計画と配慮があれば、認知症本人やご家族の楽しい思い出を作ることができるでしょう。
今回の記事では、認知症患者との旅行の際の事前準備のポイントや、旅先で行方不明になった場合のリスクなどを紹介していきます。
認知症家族との旅行を素晴らしい旅にするためにも、参考になれば幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
1.認知症家族との旅行計画のポイント
認知症の家族との旅行を計画するにあたって、いくつか抑えておきたいポイントがあります。
● 余裕のある行程
旅行の行程は、予定を詰め込みすぎずシンプルにしましょう。
認知症患者は、判断力や認知能力が低下しているため通常より時間を要します。また、急かすことによりパニック状態になってしまいトラブルも発生しやすくなり、家族との良い旅行の思い出が苦い思い出になる可能性も。
こういった状況を回避するためにも、余裕を持った行程を組むといいでしょう。
● 持ち物リストの作成
持ち物リストを作成しておくと、認知症患者も焦ることなくスムーズに準備をすることができます。
また「旅行に行く」というワクワク感も得られるため良い刺激にもなります。
持ち物リストは、常備薬や保険証などの必須なものなどを書き出して、分かりやすく可視化しておくことをおすすめします。
● 徘徊対策を講じておく
旅行先での徘徊が不安だと感じる方は、GPSの活用もおすすめです。
認知症徘徊GPSセンターでは短期間でのGPS機器のレンタルサービスも提供しており、実際に旅行目的でレンタルされる方もいらっしゃいます。
GPSを持っているという安心感を得て、旅先での行方不明等のリスクを最小限に抑えることが可能です。
また、普段から弊社のGPS機器を利用されている方の場合、旅行の時はエリア設定を旅行先の宿を中心に設定するなど目的に合わせて自由に変えることもできます。
日課である朝の散歩など、自由と楽しみを満喫できるでしょう。
● 体調に合わせた柔軟なプラン
認知症患者は、身体や精神面での体調が毎日安定しているとは限りません。
急な体調の変化に対応できるよう、柔軟なプランを考えておくと良いでしょう。
例えば、初日はアクティビティをする予定だったけど、こわばりや不安が強く出ているのでゆっくりできる場所に変更しようなど別ルートも考えておくと本人や家族にとっても良いです。
● 宿泊地や観光地のサポートの確認
宿泊先や訪れる先のサポートには何があるか確認しておくことをおすすめします。
例えば、トイレの場所や車椅子の貸し出し、バリアフリー対応であるかなどを忘れずに確認しましょう。
● 過去に訪れたことのある場所を選ぶ
新しい場所へ訪れるのも良いのですが、過去に行ったことのある思い出の場所に行くのも良いでしょう。
認知症は、記憶の引き出しがうまく引き出せないだけで、何かをきっかけに思い出せることがあります。
昔見た光景や体験した出来事を再び経験することで脳が刺激されると、脳の活性化や精神的な安定に繋がるといわれています。
実際に心理療法でも「回想法」として取り入れられているものです。
2.旅行の事前準備
GPS機器のレンタル
先述したように、徘徊の可能性のある方はGPS機器のレンタルをおすすめします。
1ヶ月分の利用料はかかりますが、旅行先での安心が大きいので短期間でもGPS機器をレンタルしておくと良いでしょう。
初めてGPS機器をレンタルする場合は、事前にテスト使用をして動作確認をしておくことをおすすめします。
緊急連絡先を持たせる
認知症家族の持ち物に連絡先を書いた紙や名札を持たせたり、衣類に縫い付けておくと、発見された際に連絡がスムーズに取れます。
徘徊で行方不明になったときに発見した人が分かりやすいように、緊急の連絡先など記入したものを準備しておくと良いでしょう。
介護旅行サービス
どうしても不安があるけれど、それでも旅行に連れて行きたいと考えている方は旅行会社が運営する介護旅行サービスや、トラベルヘルパーの利用も視野に入れておくと良いです。
これらのサービスは、安心して楽しい旅行ができるようサポートしてくれます。
旅行中はできるだけ目を離さない、迷子になりにくい環境を整えるなどの予防策を講じておくとよい旅行になりますが、介護者や家族が常に気を張っている状態になります。
頼れるサービスは必要であれば頼り、家族みんなが楽しめる旅行になると良いですね。
3.緊急時の対応について
認知症の家族が旅行中に行方不明になってしまった場合、事件や事故に巻き込まれるリスクが高まってしまうため速やかな対応が求められます。
捜索
いなくなったことに気づいた時点で、すぐに周囲を捜索し確認します。
宿やホテル、観光地のスタッフにも協力を依頼し、周辺の人々にも聞きましょう。
どうしても見つからない場合は、速やかに警察に連絡し、行方不明になった場所や時間、本人の特徴(服装、身長、髪の色など)を詳しく伝えます。
旅行中や最近撮った全身写真があると捜索がスムーズになります。
落ち着いて行動する
認知症の家族が行方不明になったとき焦りや不安が生じますが、落ち着いて行動することが重要です。
パニックになっている状況では、必要な情報が伝えられないことがあり捜索に時間がかかってしまいます。
なるべく冷静に対応をしていきましょう。
携帯電話やGPS機器の活用
認知症家族にGPS機器を持たせている場合、端末を利用して居場所を特定できるか確認します。
弊社のGPS機器では、独自のアプリケーションで「今の位置」以外にも「移動経路」を把握することができます。
移動経路は時間経過によって色が変化するため、どこを通って移動していったのか分かりやすくなり現在地を予測することが可能です。
宿泊先や観光地に知らせる
宿泊先や観光地の管理者にも行方不明になったことを伝え、できるだけ協力してくれる人を集めると迅速な発見につながります。
また、SNSなどインターネットを使って行方不明者の情報を集めることも可能です。
しかし、個人情報など不特定多数に見られてしまうリスクもあるため、十分に理解した上で活用してください。
発見後の対応
認知症の家族が無事に発見された後は、本人を落ち着かせ、怪我の有無や体調(脱水を起こしていないかなど)や、精神状態を確認しましょう。
必要に応じて医療機関を受診することも検討しましょう。
4.まとめ
認知症患者との家族旅行は、普段以上に念入りな準備が必要です。
事前の準備をしっかりと行うことで、認知症の家族とともに旅を楽しむことができて、思い出に残る特別な時間を過ごすことができるのではないでしょうか。
家族にとって負担の少ない旅行計画を立て、ゆったりとしたペースで過ごすことにより安心感を保ちながら、笑顔になる瞬間を作ることができるでしょう。
何気ない風景やささやかな交流がかけがえのない思い出となり、家族との絆を一層深める旅になることを願っています。
参考
健康長寿ネット: 回想法
認知症徘徊GPSセンター: GPS端末の特徴

執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士としてデイケアで働きながら、介護職の楽しさを発信するためWEBライターとしても活動中。読みやすく分かりやすい文章を目指して頑張っています!